体外受精のリスク

  1. 低い妊娠率・分娩率、高い流産率
    日本産婦人科学会で体外受精による妊娠率は約20~30%、分娩率は約20%と報告されています。そして、体外受精での流産率は約20~25%で、自然妊娠での流産率約10%と比べると高率です。
  2. 卵巣過剰刺激症候群OHSS
    軽症を含めると、体外受精1周期あたりに起こる確率は、2~33%と報告によって差があります。重症は1~2%に発症するといわれており、死に至る事もある病気です。
    原因は過排卵刺激によって過剰の卵巣ホルモンや各種サイトカインが分泌され、その結果、血管内の水分が、血管外に漏出してしまう事です。血液が濃縮されて固まりやすくなり、重症の場合には血栓ができることもあります(脳梗塞、心筋梗塞、下肢静脈血栓、肺梗塞などで致命的なものもあります)。また血管の外へ漏れだした水分は胸水や腹水となり、呼吸障害や腎機能障害を起こすことがあります。
    現在OHSSを起こさないような排卵誘発法や黄体補充療法の試みがなされていますが、確実な予防法がないというのが現状です。
    OHSSは胚移植後、妊娠が成立すると重症化しやすいので、状況に応じて得られた授精卵すべてを凍結保存し、その周期の胚移植をキャンセルします。
  3. 麻酔の合併症
    採卵時、必要に応じ局所麻酔や静脈麻酔を行います。麻酔の効き方には個人差があり、アレルギー(ひどい場合、血圧低下や重症喘息発作)を起こしたり、通常量でも呼吸抑制や徐脈を起こすことがあります。今まで麻酔(歯科治療の局所麻酔も含む)を受けて副作用の出たことがある方は、必ず申し出てください。
  4. 採卵時の出血、卵巣周辺臓器損傷
    卵巣のすぐ近くには内腸骨動脈・静脈という太い血管や卵巣動脈、子宮動脈という血管があります。この血管に傷がついてしまうと、腹腔内に大量の出血を起こすことがあり、重症例では手術で開腹して止血を行わなければならないことがあります。
    また、卵巣の周辺には腸管・膀胱といった臓器があり、採卵時損傷を受けることがあります。この場合も症状に応じて手術が必要となります。特に子宮内膜症を合併している場合や、手術の既往がある場合には骨盤内癒着のために卵巣が通常の位置にないことがあり、無理に穿刺すると周囲の血管や臓器を損傷する可能性があります。これらの危険をできるだけ避けるため、卵胞があっても無理に穿刺しないことがあります。
  5. 子宮外妊娠
    胚移植は子宮内に行いますが、授精卵の移動によって子宮外妊娠が起こりえます。
  6. 多胎妊娠
    体外受精による多胎妊娠率は20%といわれており、自然妊娠に比べると高率です。多胎妊娠は早産や子宮内胎児発育遅延の頻度および妊娠中毒症の確率が高くなります。このように、多胎妊娠により母体、胎児、新生児の死亡率が上昇するため胚移植の数が現在2個までと決められています。
  7. 出生時の予後
      体外受精の技術が確立されてからまだ日が浅いため、誕生した児や次世代に対する影響などについては不明で、研究が進められている段階です。
  8. 不妊遺伝子の遺伝
    特定の遺伝子の小さな欠損や変異などにより、不妊症になることがわかってきました。この遺伝子により精子や卵子の質に問題があっても体外受精により妊娠できるケースが多くあります。この場合、同様の不妊形質が児に遺伝する場合があります。例として、Y染色体のある遺伝子に欠損がある場合に重度の乏精子症になることが知られており、この精子を用いて体外受精を行ったとき、仮に男児が誕生した場合に父親と同じ乏精子症になる確率が非常に高くなります。
  9. 経済的問題
    1回試行ごとに体外受精で約25万円、顕微授精で約30万円かかります。(外来での注射費用は含みません)
    健康保険はききません。すべて自費診療となります。

代替手段について

体外受精を試みても精液所見が不良のため、授精が成立しないことがあります。また、精液の所見が正常でも精子、または卵子に何らかの異常があり授精が成立しないこともあります。この様な時は顕微授精という方法をとります。