胚移植・凍結保存

発生した胚を子宮へ移植します。移植といっても、胚を子宮腔置いてくるだけなので、麻酔をかけたり針を刺したりするようなことはありません。
カテーテル(細長いチューブのようなもの)に胚を吸っておき、子宮腔へ挿入後、ごく少量の培養液と共に胚を吐き出して終了です。

採卵のためのホルモン注射で体内のホルモンバランス崩れていますので、胚移植後はプロゲステロンという黄体を維持するホルモンを補充するため注射に通っていただきます。

当院では基本的には3日目の胚を移植することにしていますが、4日目や5日目に移植を行うこともあります。統計的にはどの日に移植しても妊娠率には差がありません。卵割期のはやい段階で体内に戻してあげた方が胚にとっていい環境だったりすることもあれば、4~5日目に胚を受け入れる子宮の環境が整ってから移植した方が妊娠しやすいこともあるからです。移植の日は授精卵の数や日程的な都合により相談して決定します。ただし、3日目の移植を何回か行っても妊娠に至らない場合や、子宮外妊娠の既往がある方にはできる限り4~5日目の移植を行います。

また、移植する胚の数については多胎妊娠のリスクを回避するため、原則1個を基本にしています。ただし、35歳以上の方や、何回か体外受精に失敗している場合には2個移植することもあり、患者様のご希望とご都合を伺って決定しています。

世界的にも多胎妊娠を回避する傾向にあり、一回の採卵で得られ、移植に用いなかった胚は凍結保存して次回移植する治療法も積極的に導入しています。

発育不良と判断した卵子・胚は発育良好な胚を移植、凍結した後処分させていただきますのでご了承ください。(発育不良胚とは主に未授精、分割不良、変性した卵子、胚のことを指します。)

不慮の事故(地震、火災、異常気象など)による卵子、胚、精子の損壊、喪失について当施設は一切の責任を負わないものとします。

胚の凍結保存に関する説明

胚の凍結保存はIVFやICSIの際に複数個の授精卵が得られ、なお胚移植後にも良好な授精卵が余分に残っている場合、またはOHSSの為に胚移植を行わなかった場合に余剰胚を凍結保存し、次週期以降に胚移植を行います。

凍結保存が行われるようになった理由は、IVFやICSIの卵胞刺激法により一度に複数個の卵子が採れるため、授精卵も多く得られるようになりました。しかし多胎防止のために日本産婦人科学会の会告により胚移植は原則1個までとしております。そこで残った胚は凍結保存をいたします。したがって、1回の採卵でその後1~3回の移植ができるため、採卵1回あたりの妊娠率が高くなります。また、患者さまの肉体的、経済的負担も少なくて済むようになりました。そのような理由で凍結保存が必要となっております。なお、未授精卵は凍結、融解時に損傷を受けることが多いので、授精後の胚を凍結するのが一般的です。

胚の凍結保存の実際

採卵後3~5日に胚を移植します。その時点で良好胚が残った場合、患者さまの同意を得て凍結保存を行います。
胚は凍結する前にまず凍結保護剤といわれる胚が凍るときにできる氷の結晶から胚を守る役目をする薬剤に浸し、専用器具に封入しー196度の液体窒素中に保存します。

胚の融解、移植の実際

凍結してある胚を液体窒素より取り出し、37℃の培養液中で凍結保護剤を取り除きます。その後2時間以上培養してから生存が確認できた胚を移植します。
凍結胚の移植は体外受精を行った周期から少なくとも1周期以上過ぎてから行います。胚移植日は外来通院にて超音波検査やホルモン補充、ホルモン検査などを行い、排卵日を推定してそれに基づき決定します。

凍結胚移植の成績と影響

授精卵が凍結融解後に生存する確率は約70%です。すなわち、凍結保存により30%は変性してしまいます。そのため移植できない場合もあります。
凍結胚により妊娠した胎児の予後調査をしてみますと、身体発育、精神発達にも自然妊娠との差は認められておりません。先天異常の発現率も差がないと報告されています。しかし、体外受精と同じく技術が確立されてからまだ日が浅いため、誕生した児や次世代に対する影響などについては完全に解明されているとは言い難く、研究が進められている段階です。

胚の保存期間・取り扱いについて

  1. 凍結保存期間は2年までとする。
  2. 保存期間を2年より延長する場合は更新手続きを要する。
  3. 次のいずれかに該当する場合は期間内であってもその時点で破棄させていただくことがあります。
    • 夫婦が離婚した場合
    • 夫婦、または夫婦どちらかが死亡した場合
    • 夫婦の意志として廃棄の申し出があった場合
    • 保存期間が2年を超え、更新手続きが行われなかった場合
    • 転居などにより連絡が取れない場合
    • 妻が女性の生殖年齢を超えた場合
    • 疾患などにより子宮を失った場合、妊娠・出産時に母体に重大な影響が予想されるなど、移植ができないと判断した場合
    • 当院が何らかの理由で医療行為が行えなくなった場合
  4. 天災、あるいは予測できない事態にて凍結胚の損傷、喪失した場合、当院はその責任を負いません。