体外受精の方法

  1. 排卵誘発

    卵胞ホルモンの注射により複数の卵胞を発育させます。注射のプロトコルはいくつかありますが、患者様の体質により選択しています。
    当院の基本は多くの卵を得られる可能性があるCOS(調節卵巣刺激)です。この方法では連日注射を打ちに外来へ通っていただくか自己注射していただきます。内服のみで排卵誘発する事や自然排卵周期で採卵することもあります。外来で卵胞の大きさ計測する超音波検査と血中ホルモン値測定を数回行い、卵胞の発育に合わせて採卵の日を決定します。

  2. 採卵
    採卵は経腟超音波検査機で確認しながら吸引可能な全ての卵胞に針を刺し、卵胞中の卵子を卵胞液ごと吸引することより行います。
    当院では卵胞が少ない場合を除いて麻酔をして行っております。
  3. 媒精(ばいせい)
    採取された卵子は付着した血液などを落としたあと、培養液に移し、体温と同じ37℃に保たれた培養器で保存します。その間に精液中から良好運動精子だけを集める処理を行います。
    卵子と精子を数時間一緒に培養することで精子が卵子内に侵入し、授精が成立します。
  4. 受精の確認と胚発生
    翌日(受精1日目)、受精の確認を行うことができます。正常に受精していれば卵子の中に2個の前核(ぜんかく 精子由来と卵子由来のものがひとつずつ)を確認できます。前核が確認できない場合や、2個以外の数の前核があるものは受精に失敗してしまった卵子です。
    受精2日目と3日目には受精卵(胚)の細胞分裂を確認します。概ね、受精2日目には4細胞期、3日目には8細胞期まで分割します。割球(かっきゅう 胚の1個1個の細胞質のこと)の大きさが均等であるか、また、フラグメンテーション(割球以外の細胞の破片のことで、細胞質だけの粒子だったり、中にバラバラの染色体が入っていることもあります)の量はどの程度かで胚のグレード分けをします。グレード1とグレード2を良好胚と言います。体内では受精4日目から5日目くらいで胚は子宮へたどり着きます。受精4日目になると割球の数も増えてきて数えるのが難しくなり、すべての割球が緊密に接着して、まるで1個の細胞のように見えます。このような胚を桑実胚(そうじつはい)と言います。
    5日目になると、胚はただの細胞の集合体から、分化した細胞の集合体へと変化をはじめます。胎盤などになる細胞(栄養芽細胞)は、胚の外側へ移動して一列に並び(栄養外胚葉)、胎児になる細胞は内側に集まって塊(内部細胞塊)になります。この胚を胚盤胞(はいばんほう)と呼びます。
  5. 新鮮胚移植または胚凍結
    当院での新鮮胚移植は体外受精で発生した分割胚(2日目または3日目)を子宮へ移植します。移植は胚を少量の培養液と一緒に子宮腔置いてくるだけなので、麻酔をかけたり針を刺したりするようなことはありません。胚移植は経腟超音波装置で子宮内膜とカテーテルの位置を確認しながら行います。
    まず人工授精のような感じで外套カテーテルを内子宮口の先まで挿入します。次にあらかじめ胚を吸っておいた細くて長いカテーテルを、すでに挿入しておいた外套の中を通して子宮腔のさらに奥まで進めます。子宮底から1~2cm手前の子宮内膜が厚く見えるところにごく少量の培養液と共に胚を吐き出して終了です。移植しなかった胚は分割胚で凍結保存するか追加培養して良好胚盤胞になったら凍結いたします。
  6. 凍結胚融解移植
    当院の凍結融解胚移植はホルモン補充周期で行なっております。月経3日目ころホルモン基礎値と超音波検査に異常がないことを確認してプロギノバを内服(卵胞ホルモン補充)して子宮内膜を厚くします。数日後の検査でエストロゲン値がおよそ200ng/ml以上、子宮内膜が8㎜以上ならプロゲステロン腟坐薬を開始(黄体ホルモン補充)して胚移植の日を決めます。乳がん治療後のかたなどでは自然排卵周期で胚移植することもあります。